風流船揃[ふうりゅうふなぞろい]
歌詞[かし]
[本調子[ほんちょうし]]そもそも船[ふね]の始[はじ]まりは 唐土皇帝[もろこしこうてい]に仕[つか]えし 貨狄[かてき]といえる臣下[しんか]あり
秋[あき]吹[ふ]く風[かぜ]に庭[にわ]の池[いけ]へ 散[ち]り浮[う]く柳[やなぎ]の一葉[ひとは]の上[うえ]に
蜘蛛[ちちゅう]の乗[の]りて 細蟹[ほそがに]の糸[いと]引[ひ]きはえし姿[すがた]より 巧[たく]み出[い]だせし船[ふね]とかや (合方[あいかた])
見渡[みわた]せば 海原[うなばら]遠[とお]く真帆[まほ]片帆[かたほ] 行[ゆ]き交[か]う船[ふね]の数々[かずかず]は
霞[かすみ]の浦[うら]に見[み]え隠[がく]れ 白波[しらなみ]寄[よ]する磯[いそ]近[ちか]く 千鳥[ちどり]鴎[かもめ]の浮[う]き姿[すがた] (合方[あいかた])
網[あみ]引[ひ]く船[ふね]や釣[つ]り舟[ぶね]の 皆[みな]漕[こ]ぎ連[つ]れて行[ゆ]き通[かよ]う 眺[なが]めのどけき春景色[はるげしき] 面白[おもしろ]や
[二上[にあが]り]筑波嶺[つくばね]の 峰[みね]より落[お]つる水筋[みずすじ]も 積[つ]もり積[つ]もりて秩父[ちちぶ]より
清[きよ]く流[なが]るる隅田川[すみだがわ] 月[つき]よ花[はな]よと漕[こ]ぎ出[い]だす 屋形屋根船[やかたやねぶね]猪牙[ちょき]荷足[にたり] お厩[うまや]隅田[すみだ]の渡[わた]し舟[ぶね]
はるか向[む]こうを 竹屋[たけや]と呼[よ]ぶ声[こえ]に 山谷[さんや]の堀[ほり]を乗[の]り出[い]だす
恋[こい]の関屋[せきや]の里[さと]近[ちか]く 花見[はなみ]の船[ふね]の向島[むこうじま] 軒[のき]を並[なら]べし屋根船[やねぶね]の 簾[すだれ]の内[うち]の爪弾[つめび]きは (合方[あいかた])
もしやそれかと人[ひと]知[し]れず 気[き]を紅裏[もみうら]を吹[ふ]き返[かえ]し 追風[おいて]の風[かぜ]に
[三下[さんさが]り]上[あ]げ潮[しお]に 佃[つくだ]つくだと急[いそ]いで押[お]せば (合方[あいかた])
また上手[かみて]から 二挺[にちょう]三味線[しゃみせん]弾[ひ]き連[つ]れて (合方[あいかた])
様[さま]は山谷[さんや]の三日月様[みかづきさま]よ 宵[よい]にちらりと見[み]たばかり しょんがいな
負[ま]けず劣[おと]らぬ行[ゆ]き合[あ]いの 船[ふね]の横[よこ]から三筋[みすじ]の糸[いと]に (合方[あいかた])
二挺[にちょう]鼓[つづみ]を打[う]つやうつつの波[なみ]の船[ふね]
自体[じたい]我[われ]らは都[みやこ]の生[うま]れ 色[いろ]にそやされこんな形[かたち]になられた
見事[みごと]な酒[さけ]は多[おお]けれど 聞[き]いてびっくり丸三杯[まるさんばい]
飲[の]んだ盃[さかずき] ついついついのつい
面舵[おもかじ] 取舵[とりかじ] 声々[こえごえ]に 乗[の]りしお客[きゃく]の気[き]も浮[う]かれ
五[ご]チェイ ハマカイ 払[はら]って一拳[いっけん]押[お]さえましょ
拳[けん]打[う]ちやめて踊[おど]るやら (合方[あいかた]) 扇[おうぎ]鳴[なら]らして唄[うた]うやら しどもなや
賑[にぎ]わう隅田[すみだ]の川面[かわづら]は これぞまことの江戸[えど]の花[はな]
栄[さか]うる御代[みよ]こそめでたけれ 栄[さか]うる御代[みよ]こそめでたけれ