定吉[さだきち]: | 「何[なん]か掃除[そうじ]しながらするような芝居[しばい]おまへんかいな。」 |
亀吉[かめきち]: | 「有[あ]りまっせー。あの、幕開[まくあ]きの塀外[へいそと]。水[みず]まき奴[やっこ]が表[おもて]、掃除[そうじ]しているとこ。あそこやりまひょか。」 |
定吉[さだきち]: | 「よろしいな。やりまひょやりまひょ。」 |
亀吉[かめきち]: | 「ああいう芝居[しばい]にはね、なんとか内[ない]と名前[なまえ]が付[つ]きまっしゃろ。で、わたい亀吉[かめきち]ですさかい亀内[かめない]になりますわ、あんた定吉[さだきち]ですさかい定内[さだない]になんなはれ。よろしぃな、いきまっせ……やっとまかせの なあ、丁稚奉公[でっちぼうこう]が何[なに]になろぉ」 |
定吉[さだきち]: | 「夏[なつ]は布[ぬの]こ」 |
亀吉[かめきち]: | 「冬[ふゆ]はドテラの一貫[いちかん]で」 |
定吉[さだきち]: | 「寒[さむ]さをしのぐ茶碗酒[ちゃわんざけ]」」 |
亀吉[かめきち]: | 「雪[ゆき]と暮[くら]らすも一興[いっきょ~]か」 |
定吉[さだきち]: | 「さらば、掃除[そうじ]に……」 |
亀吉[かめきち]: | 「ヤ、掛[か]かろぉ~かい~っ」♪ |
定吉[さだきち]: | 「ヤットマカセのな、掃[は]けどもはけども落[お]ちくる木[こ]の葉[は]、何[なん]とウタトイこっちゃあるまいか」 |
亀吉[かめきち]: | 「それはそうと掃除[そうじ]が済[す]んだらこっちの付[つ]け目[め]。」 |
定吉[さだきち]: | 「いつものように台所[だいどころ]にてお清[きよ]どんの目[め]を盗[ぬす]み。」 |
亀吉[かめきち]: | 「つまみ食[ぐ]いと出[で]かけよか。」 |
定吉[さだきち]: | 「そんなら亀内[かめない]。」 |
亀吉[かめきち]: | 「そんなら定内[さだない]。」 |
定吉[さだきち]: | 「俺[おれ]に付[つ]いて、こう来[こ]いやい……」♪ 「二人[ふたり]連[つ]れたち…」 |
旦[だん]さん: | 「あーこれ、これこれっ!二人[ふたり]とも露路[ろじ]入[はい]って行[い]って何[なに]てんねん。」 |
亀吉[かめきち]: | 「旦[だん]さん、ちょっと、露路[ろじ]を花道[はなみち]に…」 |
旦[だん]さん: | 「何[なに]が花道[なに]やねん。二人[ふたり]寄[よ]ったら芝居[しばい]をする。どうもならんな。え。もうな、定吉[さだきち]はお仏壇[ぶったん]の掃除[そうじ]をしなはれ。それからな、亀吉[かめきち]は庭[にわ]の掃除[そうじ]をしときなはれや。」 |
定吉[さだきち]: | 「へーーい。」 |